
作者:枯野瑛
レーベル:角川スニーカー文庫
あらすじ。
『人間』は規格外の『獣』に蹂躙され、滅亡した。たったひとり、数百年の眠りから覚めた青年――ヴィレム・クメシュを除いて。
彼が目覚めたのは滅びた地上ではなく、多種多様な亜人族が暮らす、空に浮かぶ浮遊大陸群だった。
ひょんな事から第二位呪器技官として第68浮遊島にある秘密兵器の管理倉庫の管理人に就任する事になったヴィレムは、『聖剣』を扱える『兵器』である妖精兵の少女達と出会う。
死にゆく定めの少女妖精たちと青年教官の、儚くも輝ける日々の物語。
一言で言うと、RPGのクリア後の世界。
もっというと、前作で星神を倒して、犠牲を払いながらもハッピーエンドを迎えたパーティメンバーのひとりにスポットを当てたスピンオフ。
こういうと身も蓋もないけど、すっげー大雑把に噛み砕いて説明するとそんな感じの物語。
だが、この物語をそんな一言で表すには勿体無い。
この終末なにしてますか? 忙しいですか? 救ってもらっていいですか?(以下すかすか)は近年のライトノベルでは珍しい100%ストーリーだけで勝負しているシリーズです。
ラノベにありがちなエロやイラスト、キャラ萌えに頼っていない、今では逆に珍しい全うなファンタジー小説。
タイトルがやたら長いのはラノベならではのご愛嬌だが、寧ろ俺はこのタイトルに惹かれました。
終末なにしてますか? 忙しいですか? 救ってもらっていいですか?
このタイトルだけで終末の危機に瀕している世界で、救いを求めている少女がいるって想像できる。
作者がシナリオを書いたサモンナイト5とは一体なんだったのかと言いたくなるくらい、この作品は物語も、世界観も、設定も、キャラクターも安易なテンプレに頼ることなく、丁寧に、実直に紡がれていく。
なんと言うか、上手く言えないが、キャラクターが生きている。 キャラが濃いとか薄いとかではなく、それぞれがきちんとした思考をしていて、人間臭いのだ。人間族はもう滅びているというのに。
三人称なのもあって、登場人物の生の感情を、読者にガンガンとぶつけてくるのだが、感動の押し付けみたいな展開はなく、寧ろ淡々と物語が紡がれていく。読み終わったら自然と涙がでてる感じの方が近い。実際に泣くかどうかは人それぞれだけど。
雰囲気的には、ラノベが流行る以前のファンタジー小説やフルメタル・パニック!」や「イリヤの空、UFOの夏」など昔ながらのラノベに近く、そういった作品が好きだった人には今作はかなりオススメ出来ます。
しかし、万人向けとは言えず、読者を選ぶ作品だと思います。
完全無欠のハッピーエンドというわけではないし、本筋はどうしようもなくシリアスで話が重く、この本でしかみないような固有名詞の多さと名前の覚えづらさから、時間をあけるとなんのこっちゃってなってしまう。
正直、この物語にどハマりするか否かで評価は分かれる作品だと思います。
実は、この作品、2巻で一度打ち切りが決まっていたんです。それが、ファンの熱心な宣伝により、火がつき、電子書籍がかなり売れたみたいです。
そのおかげか、復活し、無事完結まで走り抜け、新しいシリーズやコミカライズ、アニメ化など、勢いがある作品です。
最近読んだラノベでは、ぶっちぎりナンバーワン作品なので興味があれば、是非ご一読ください。
アニメからでも、コミカライズからでも構わないので、ひとりでも多くこの作品に触れて欲しい。