作者:伊坂幸太郎
レーベル:祥伝社文庫
発売日:2003年1月(ノン・ノベル)
2006年2月(文庫)
ストーリー
嘘を見抜く名人、天才スリ、演説の達人、精確な体内時計を持つ女。この四人の天才たちは百発百中の銀行強盗だった……はずが、思わぬ誤算が。せっかくの「売上」を、逃走中に、あろうことか同じく逃走中の現金輸送車襲撃犯に横取りされたのだ!奪還に動くや、仲間の息子に不穏な影が迫り、そして死体も出現。映画化で話題なたハイテンポな都会派サスペンス!
本作の登場人物は、特殊能力を持っています。
人間嘘発見器の成瀬。
薀蓄とウソが多く、演説が得意な響野。
スリの達人の久遠。
正確な体内時計を持つ雪子
伊坂幸太郎さんの登場人物は、大衆小説には珍しい特殊能力を持ってる人物が多いですね。『魔王』の安藤兄弟とか。ラノベなんかに比べるとショボく、冴えない能力をフルに使いこなす登場人物達は痛快ですね!
伊坂節が炸裂し、軽妙洒脱に綴られる文章は、読みやすいの一言。
人によって、好きな文体が異なるとは思いますが、個人的には伊坂さんの文体かなり好きです。
なんというか、文章が重くないんですよね。こう言っちゃ伊坂先生に失礼かも知れませんが、本来の意味のラノベっぽさがあるのかな?
なんだかわからないけど、会話文が多く、軽やかでオシャレなやりとりで読みやすい気がします。小説読むの苦手な人の入門には最適かもしれません。
リー・モーガン、クリフ・ジョーダン、ウィントン・ケリー、ミッシェル・ペトルチアーニといったジャズピアニストなどは伊坂先生の教養深さが伺える。
別の現金輸送車強盗に『売り上げ』が奪われた際のやりとりなんか好きだなぁ。
「因果応報って言うのかな、こういうの」
「向こうにとっては棚からぼた餅だ。奪った車に四千万」
「俺たちはトンビに油揚げだな」
「天網恢恢疎にして漏らさず、かもしれない」
状況を諺に例えたこのやりとりなんか凄くないですか?それ以外にも思わず唸りたくなるようなやりとりが多く、伊坂さんのセンスが感じられます。そして、キャラクターが濃い! キャラクターが命のライトノベルならいざ知らず、大衆小説なのにキャラが立ちまくりです(笑)
軽やかな文章もそうですが、伊坂さんがラノベっぽいと言われるのはそういうところもあるのかな?
この話は、ミステリー小説なのだが、登場人物のノリが軽く、ミステリミステリしてないのが特徴ですね。人も死にますが、重くならない作風ですね。
勿論ミステリとしても伏線が張られ
なかなかの出来なのだが、本作の本質はエンタメ。
ミステリですが、小難しいことを考えないで彼らの小洒落た会話を楽しむのもありかな?と感じたり。
主人公達はギャングという、反社会的な職業(?)な以上、強盗を始め犯罪行為をしますが、不快に感じないような描写を書ける伊坂さんには脱帽。
勿論個人的な感想なので、個人差があると思いますが、